タバコはなぜ歯周病に悪いと言われるのでしょうか? blog

2015.08.18

歯周病も虫歯も感染病です。

虫歯には虫歯の、歯周病には歯周病の原因菌が存在し、それが何かの経路を介在して口腔内に入り感染病として発症する列記とした病気です。
どうしても、虫歯や歯周病は病気として認識されることが少ない印象を受けますが、風邪やインフルエンザなど皆さんが日常生活でよくかかる、もしくはかかる可能性のある病気と同じです。

風邪をひいてもしくはインフルエンザを発症して、発熱や咳が続くのにタバコを吸い続けることができますか?

もし一日でも早く病気を治したいのであったら、ほとんどの方は喫煙を控えると思います。それはなぜでしょう?
もしかしたら気持ちの面もあるかもしれません。
もちろん、咳が酷くてタバコどころではない、熱が出て起き上がるだけでも一苦労…なんてことも考えられるでしょう。

では、歯周病の場合はどうでしょうか?
特に熱が出るわけでもない、体も怠くはない、ですが病気は病気です。
では、なぜタバコは歯周病に悪いのでしょうか?

タバコに入っている化学物質

タバコは化学物質の塊とも言われています。

ではどのくらいの種類の化学物質が入っているのでしょう?
厚生労働省の『最新たばこ情報』ではタバコからは約3000種類の、タバコの煙からは約4000種類の化学物質を分離できたという報告があります。
誰もが煙の中に、これほどの種類の化学物質が含まれていることは知られていないでしょう。

そして、タバコの煙に含まれる化学物質のうち、人体に有害なものは250種類を超え、発癌性が疑われるものは50種類を超えると言われています。

その中でも有名な3つの化学物質をあげます。

ニコチン

体に取り込まれることにより、血管にダメージを与えるだけでなく、体内の血管を細くし、心臓に負担をかけます。
そして、悪玉コレステロールを取り込みやすくなることが確認されています。
また、習慣性があり、その依存度はコカインやヘロインといった依存性物質と同じとされています。

一酸化炭素

一酸化炭素が取り込まれることにより、血液中で酸素が運ばれるのを阻害したり、息切れやスタミナ不足を起こします。
そのため運動能力の低下や動脈硬化を促進します。
タバコに入っている量では急性症状は発生しませんが、循環器系に多大な負担をかけます。

タール

いわゆるヤニで、タバコの煙の中に含まれます。
発がん性物質の塊であり、肺の中を黒くさせる原因物質です。
タールには発がん性がある化学物質が確認されています。

では、なぜタバコは歯周病に悪いのか?

歯周病とは、歯と歯茎の境目に付いた歯垢(プラーク)の中に存在する歯周病原因菌によって歯茎が炎症を起こし歯茎が退縮し、それに伴い歯を支えている歯槽骨が破壊されていく病気です。
以前は歯周病、歯肉炎ではなく歯槽膿漏と呼ばれていましたのでこちらのほうが耳にした方もいらっしゃるかもしれません。

この歯周病を予防するには、歯垢や汚れを歯ブラシや歯間ブラシを使って行うセルフケアをすることにより、プラークコントロールを行うことが最も有効ですが、近年このプラーク以外に喫煙が重大な危険因子があることが確認されました。

なぜ、タバコを吸うことが歯周病に悪影響を及ぼすのでしょうか?
それは先ほど記述した化学物質にあります。
タバコを吸うことにより、以下の問題が発生します。

  1. 歯周病菌と戦うはずの白血球の機能が低下してしまう
  2. 歯茎に酸素や栄養を供給するのに大切な血管が、ニコチンにより収縮してしまう
  3. 傷付いた歯茎を修復するために必要な線維芽細胞の働きが抑制されてしまう
  4. 歯と歯茎の境目にある溝の中の酸素濃度が低下し、歯周病菌にとって繁殖しやすい環境を作ってしまう

また、タバコを吸う人は吸わない人に比べ約3倍も歯周病にかかっており、また2倍も多く歯を失っているというデータもありますし、喫煙本数と比例して歯周病が重症化することも分かっています。

歯周病が悪化することも考えられるが、気付かないということも?

ここまで、タバコを吸うことにより体内環境が崩れてしまい、歯周病が悪化するということをお話しさせてもらいましたが、そのほかには問題がないのでしょうか?

実は、タバコに含まれる化学物質が原因で歯周病を気付きにくくする、そして治癒を妨げる効果もあるということがわかっています。

タバコに含まれる化学物質によって歯茎からの出血を抑えたり、変に歯茎が硬くなることで症状が気づきにくくなることがあります。
また、タバコを吸うと末梢血へ悪影響を及ぼすので、歯周病の治療を行っていても、治り方が悪くなることもわかっています。

その他には、口腔内が不衛生になることで口臭の原因になったり、虫歯の原因菌が活動しやすい環境になってしまったりということが考えられます。
もし、自分が歯周病である、もしくはその疑いがある場合、可能であれば禁煙をお勧めします。