妊娠すると歯が弱くなると聞きましたが、本当ですか?どうしたらよいですか? blog

2015.08.27

妊娠しても歯は弱くなりません。

人間の歯はいかなる時も弱くなることはありません。
妊娠したからと言って歯が脆くなったり柔らかくなったりすることもありません。

また、昔から「一子産むと一歯失われる」というようなことを耳にしますし、「赤ちゃんにお母さんの歯のカルシウムを取られるから」なんて話を聞くことがありますがそんなことはありませんし、決してお腹の赤ちゃんのせいではありません。

しかし、確かに妊娠中に母親の歯の健康が損なわれることは多いようです。
ではどのようなことが原因なのでしょうか?

考えられる原因

悪阻

まず考えられることは悪阻です。
妊娠された方なら個人差はあるものの誰でも経験されたと思います。
常に具合の悪い状態が続き、食べ物を口に含んだだけで嘔吐されてしまう方もいらっしゃると思います。
ではなぜ悪阻が原因なのでしょうか?

悪阻で気持ちが悪いと、どうしても歯磨きが不十分になり、歯垢や汚れなどの磨き残りが多くなってしまいます。
悪阻が酷い方だと、歯磨き粉の味や匂いがダメだったり、歯ブラシ自体を口に入れることもできなかったりします。
また、長時間歯磨きができない、気持ちが悪いので回数が減るなどついつい歯磨きを怠るようになると、虫歯菌が増えやすい状態になり、虫歯の発症や進行のリスクが高くなります。

また、悪阻で具合が悪くなり、嘔吐する方もいらっしゃると思います。
吐いてしまったら、食べ物や飲み物と一緒に胃液が出てきます。
胃液は強酸性でとても歯には悪いのです。
どうしても具合が悪く吐いてしまう方は、常に口腔内が酸性になってしまい歯が脆くなり、虫歯になりやすい口腔内環境になってしまいます。

逆に食べ悪阻など常に食べ物を口にしてないと具合が悪いような方は、常に口腔内が酸性の状態になってしまい、虫歯になるリスクが高まります。

ホルモンバランスの変化

妊娠によりホルモンバランスが変化します。
それにより、唾液の性質も変化して粘り気が出るため、細菌が活動しやすくなります。
また、妊娠すると分泌される唾液の量が減り、自浄作用が低くなるので、口の中が中性から酸性になりやすくなります。

酸性の口腔内は歯の再石灰化の働きが弱くなるので、虫歯になりやすい環境になってしまいます。
口の中は常に中性に近い状態が保たれており、それが食べ物や飲み物を口に含むことにより酸性になり、脱灰という歯が脆い状態になります。それを助けるのが唾液による中性に戻す効果の再石灰化です。

しかし、妊娠によりその効果が薄れ、虫歯になりやすい口腔内環境になってしまうと考えられます。

食事の回数

お腹の中の赤ちゃんが大きくなるにつれ、胃や腸などの内臓が押し上げられることにより胃が圧迫され、少量ずつ何度も食事をするようになるので、口の中で酸性の状態が長く続き、虫歯ができやすくなります。

また、不足になりがちといわれている鉄分を補うために小まめに飴などの補助食品を食べたり、水分不足に陥らないようにしかし吸収のよい清涼飲料水を摂取するなど実は糖質の多い食品を口にする回数が増え、虫歯になりやすい口腔内環境になっていることが考えられます。

気を付けるのは虫歯だけではありません。

妊娠により虫歯になるリスクが高まることは否めません。
その他にも気を付けなければならないことがあります。まず1つは妊娠性歯肉炎や口内炎です。
妊娠2~4ヶ月に起こりやすく、歯肉が赤く腫れあがり、出血しやすくなります。
原因は体の変化によるものなので、歯肉炎自体は歯茎のマッサージと歯磨きなどのセルフケアによるプラークコントロールで十分治癒しますし、口内炎も口の中を清潔していればほっておいても2週間ぐらいでなくなります。

しかし、歯周病には気を付けなければなりません。
娠性歯肉炎と重なると進行が速くなり、悪化すると歯がグラグラになってしまいます。
ここまで来てしまうと歯磨きだけでは治らないので、歯科医院で歯周治療を受ける必要があります。

また、歯性中心感染症にも気を付けなければなりません。
歯の慢性化膿性炎症から体の他の部位に異常が起こることがあります。
ここまでくると、歯科では対応できず医科に受診しなければなりません。

また、妊娠中は精神的にも不安定になるため、歯ぎしりや食いしばりによる歯へのダメージ、そして顎関節への影響も考えられます。

ではどうしたらよいのでしょう?

やはり一番は歯磨きです。
しかし、具合が悪く歯磨きすらままならない人はとにかくリラックスした具合の落ち着いている時間を見つけて行うことがよいでしょう。
また、清涼感のあるマウスウォッシュ液を併用することで少しスッキリするかも知れません。
また、フッ化化合物を使用し虫歯になりにくい歯に保ったり、デンタルフロスを使用して磨きづらい部分の清掃も気を付けることもよいでしょう。

なにより、体調が良い時を見て、歯科医院にて妊婦歯科健診を受診し、口内チェックと適切な指導と専門的なケアをしてもらいましょう。