歯周病になると歯が抜けるのはなぜですか? blog

2018.05.05

杉並区の歯医者さん、浜田山おとなこども歯科・矯正歯科です。
今回のテーマは「歯周病になると歯が抜ける理由」です。
虫歯は歯が痛い病気と表現する人が多い一方、歯周病は歯が抜ける病気と表現されています。

確かにそれは正しく、日本人が歯を失う要因は何年もの間ずっと歯周病がトップです。
では、そもそもなぜ歯周病になると歯が抜けてしまうのでしょうか。
ここでは歯周病で歯が抜ける理由について説明していきます。

歯を支える歯槽骨の存在

身体の至る箇所には骨があり、それぞれの骨は身体の一部を支える役割を持っています。
このため骨がたった1本でも失われることで、その骨が支える箇所は不安定になります。
例えば腕の骨を骨折してしまえば、その瞬間から腕は普段どおりに動かせなくなりますからね。

実は歯にもこれと同じことが言えます。歯は歯槽骨と呼ばれる顎骨に支えられており、
それぞれの歯は歯槽骨に収まっているのです。
このため、歯槽骨が失われてしまえば歯は支えを失って抜け落ちてしまいます。

歯周病によって溶かされる歯槽骨

「歯槽骨が失われることで歯は支えを失って抜け落ちる」…上記でそう表現しましたが、
歯周病になってそれが進行すると実際にこのようなことが起こります。
正確に言えば、歯槽骨が溶かされてしまうのです。

最も、歯槽骨は徐々に溶かされていきますから、いきなり歯が抜けてしまうことはありません。
少しずつ溶かされることで歯はグラつくようになり、次第にそれが酷くなっていきます。
そして一定以上の歯槽骨が溶かされた時、歯は完全に支えを失って抜け落ちてしまうのです。

歯槽骨が溶かされた時の自覚症状

歯周病によって歯槽骨が溶かされても、それを目で見ることはできません。
しかし以下のような自覚症状が起こるため、このような自覚症状があった時には歯周病になっていて、
なおかつ歯槽骨が溶かされるほど歯周病が進行していると捉えた方が良いでしょう。

・歯がグラつく
歯槽骨が溶かされることで歯は支えを失います。完全に支えを失わない限り抜けることはないものの、
支えの一部が失われることで歯が不安定になってグラつくようになります。

・歯が長くなって見える
歯槽骨が溶かされると歯肉退縮が起こり、歯肉の高さが下がります。
これによって歯肉に覆われているはずの歯の根が露出してしまい、一見歯が長くなったように見えます。

・冷たいものや熱いものがしみる
「歯が長くなって見える」に関係して起こる症状です。露出した歯の根は象牙質が剥き出しになっており、
刺激に対して敏感です。このため、冷たいものや熱いものを飲食すると温度が刺激となってしみるのです。

溶かされた歯槽骨を再生させるには

例え歯槽骨が溶かされていたとしても、歯周病治療の中で歯槽骨を再生させることはできません。
歯槽骨を再生させるには、歯周病治療とは違った全く別の治療をしなければなりません。

・GTR法
歯槽骨を失った箇所に特殊な膜を置き、余計な組織が入り込まないようにします。
そうすることで、必要な骨や歯周組織の再生を促す治療方法です。
ただし全ての症例に対応できるわけではありません。

・エムドゲイン法
歯肉を切開し、そこにエムドゲインという薬を埋め込みます。
これによって子供の歯が生えた時と似た環境を作り出し、その結果骨や歯肉繊維の再生を促します。
ただし持病によっては行うことができない治療な上、成功しても完全に元どおり再生できるとは限りません。

・骨移植
再生ではなく移植する方法で、分かりやすく言えば口腔内の他の箇所の健康な骨を移植するのです。
つまり、歯槽骨が失われていない箇所の骨の一部を歯槽骨が失われた箇所に移植して、
骨の不足を補うという方法です。インプラント治療を行うにあたって必要になることもある治療方法です。

…このような方法で溶かされた歯槽骨の再生ができますが、正直お手軽な治療とは言えません。
治療にあたって切開が必要ですし、高い技術力を求められる治療方法のため、
そもそもエムドゲイン法や骨移植を行っている歯科医院が少ないのです。
さらにこれらは自由診療となるため、高額な治療費が掛かるという欠点もあります。

まとめ

いかがでしたか?
最後に、歯周病になると歯が抜ける理由についてまとめます。

1. 歯を支える歯槽骨の存在 :歯は歯槽骨と呼ばれる骨に支えられている
2. 歯周病によって溶かされる歯槽骨 :歯周病になると歯槽骨が溶かされ、歯は支えを失って抜け落ちる
3. 歯槽骨が溶かされた時の自覚症状 :歯がグラつく、歯が長くなって見えるなど
4. 溶かされた歯槽骨を再生させるには :GTR法、エムドゲイン法、骨移植

これら4つのことから、歯周病になると歯が抜ける理由について分かります。
歯周病は歯肉の病気で、初期段階では炎症によって歯肉の変色や腫れが起こります。
しかし進行すれば歯を支える歯槽骨が溶かされてしまいます。
支えを失った歯は不安定になってグラつき、やがて抜け落ちてしまいます。
これが歯周病で歯を失う理由であり、日本人が歯を失う要因として最も高くなっています。