医療技術は常に進歩していますが、歯周病治療についてはどうですか? blog

2018.06.12

杉並区の歯医者さん、浜田山おとなこども歯科・矯正歯科です。
今回のテーマは「歯周病治療の進歩」です。
医療技術は常に進歩しており、現代では昔に比べて多くの病気に対処できるようになっています。

最も、こうした医療技術の進歩は内科や外科が目立ちがちですが、歯科においても同様のことが言えます。
例えば歯周病治療…基本はプラークコントロールと口腔内のプラークや歯石の清掃ですが、
存在する治療方法はそれだけではないのです。

PDT治療

光力学療法と呼ばれるもので、最新技術を用いたバイオテクノロジー治療です。
簡単に言えば、細菌をレーザー光によって光殺菌することができます。
まず光感受性物質を投与して、レーザーによる波長の光を照射して活性化させます。

これが薬理作用を得る効果があり、現在では肺がん治療などにおいてもこの方法が応用されています。
歯周ポケットにバイオジェルを注入し、レーザー光で光殺菌できるため、
治療の流れとしても「バイオジェル注入→レーザー照射」だけで歯周ポケットの細菌を完全に駆除できます。

<PDT治療の欠点>
PDT治療は一見万能に思えますが、実はそうではありません。
PDT治療を行う場合、既に歯周病の基本治療が終了して継続的安定化治療に入っていなければなりません。
このため、歯周病が発覚した時点ですぐPDT治療を行うというわけにはいかないのです。
また、もう1つの大きな欠点はPDT治療を行っている歯科医院が少ないことです。

骨の再生療法

歯周病が進行すると最終的に歯が抜けてしまいますが、これは歯を支える歯槽骨が溶かされるためです。
さて、歯周病によって溶かされた歯槽骨は通常なら再生しませんが、
骨の再生療法を行うことで再生を促すことができます。そして、骨の再生療法には2つの方法があります。

GTR法

骨の再生療法という点から最先端の治療とイメージしがちですが、
GTR法においては実は1980年代に登場した治療方法です。
骨が失われた箇所に医療用のゴアテックスの皮膚を設置し、失われた骨の再生を促します。

<GTR法の欠点>
GTR法の欠点は、日本人の歯肉には不向きな点です。
歯肉の下にゴアテックスの皮膚を設置して縫合しますが、日本人は歯肉が薄い特徴があります。
このためGTR法が技術的に難しく、術後に皮膜が露出してしまう可能性もあります。
そうなってしまうと感染が起こり、骨の再生は不可能になります。

エムドゲイン法

エムドゲインとは、スウェーデンの豚の歯の芽から抽出できるタンパクの一種です。
歯肉を切開してエムドゲインを患部に塗布し、その後再び歯肉を縫合します。
これによって患部は歯が生えてくる時と同じ環境になるため、歯の周囲の骨の再生を促せます。

<エムドゲイン法の欠点>
エムドゲイン法はGTR法にかわる治療方法と言われており、手術の難易度も高くありません。
もちろんエムドゲインも厚生労働省に承認されていますし、
手術の難易度が高くない点から患者さんも不安なく治療を受けられます。ただし欠点があり、
対応できる症例がGTR法よりも少ないため、どんな状態でも確実に再生を促せるとは限らないことです。

歯周内科治療

薬の力によって歯周病を治す方法です。
そもそも発想は風邪薬で、歯周病は歯周病菌に感染することで起こる細菌による感染症です。
つまり、細菌による感染症という点では風邪と同じ特徴を持っているのです。

風邪は薬で治せるため、歯周病も風邪と同じ特徴を持っているなら薬で治せるのではないか?
…この発想が原点で、歯周内科治療では実際に薬を服用することで歯周病を治せます。
デジタルパノラマレントゲンや顕微鏡によって病巣部や細菌の状態を確認し、それにあった薬を服用します。

<歯周内科治療の欠点>
歯周病は風邪と似た特徴があるものの、もちろん別物ですから異なる点もあります。
それは再発の可能性があることで、例え薬で歯周病が治っても歯周病の再発に注意しなければなりません。
また、薬で治せるという点から手軽な治療に思えますが、通院が必要ないというわけではありません。
治療後は再発を予防するため、定期的に検診を受けなければならないのです。

まとめ

いかがでしたか?
最後に、歯周病治療の進歩についてまとめます。

1. PDT治療 :レーザーを照射することで歯周ポケットの細菌を光殺菌できる
2. 骨の再生療法 :GTR法やエムドゲイン法。溶かされた歯槽骨の再生を促すことができる
3. 歯周内科治療 :風邪薬のように薬の力で歯周病を治す。再発の注意が必要

これら3つのことから、歯周病治療の進歩について分かります。
3つの治療方法を紹介しましたが、同時にそれぞれの治療方法の欠点も紹介しました。
つまり、どの方法も治療方法としては画期的ですが、例外なく欠点があるのです。

このため、このような治療方法があるからと言って歯周病を安易に考えてはいけません。
例えば「骨の再生療法があるなら歯槽骨が溶かされても大丈夫」…そう思うことは厳禁です。
この場合も症例によっては対応できないですし、完全に元どおりの状態になるとは限らないのです。