なぜインプラントは自由診療になるのですか? blog
2021.07.15
杉並区の歯医者さん、浜田山おとなこども歯科・矯正歯科です。
今回のテーマは「インプラントと健康保険適用」です。
インプラントは歯を失った時に行う治療であり、非常に安定性の高い人工の歯を再現できます。
歯を失った場合、そのままにしておけば隣接していた歯が動いてしまうため、
歯を失った時には人工の歯で対処することが必須です。
しかし、そんな大切な治療であるインプラントはなぜ自由診療として扱われているのでしょうか。
インプラントが自由診療になる理由
インプラントが自由診療になる理由は、健康保険適用の基準を知ることで理解できます。
健康保険は医療費に対して適用されるものですが、全ての医療が対象になっているわけではありません。
健康保険適用の対象になるのは、「病気に対して必要な最低限の治療」です。
- ホワイトニング
- 歯列矯正
例えば、これらはいずれも治療になりますが、目的は審美性の向上であって病気を治すためではありません。
そのため、医療ではあっても健康保険は適用されないのです。では、インプラントの場合はどうでしょうか。
インプラントは失った歯への対処となる治療ですから、その目的は歯の健康のためです。
ですから、「病気に対する治療」という点では健康保険適用の基準を満たしているのですが、
「最低限の治療」という点では当てはまらず、なぜなら最低限以上の審美性・機能性が備わっているからです。
ちなみに、セラミック治療にも同様のことがいえます。
詰め物・被せ物は虫歯という病気の治療において必須の治療ですが、
セラミックという素材は審美性・機能性が高く、最低限以上の価値があります。
つまり、インプラントが自由診療になるのは「病気の治療ではあっても最低限以上の治療」というのが理由です。
インプラントの健康保険適用
2014年に健康保険が改定され、やむなくインプラントにする場合に限り、健康保険が適用されるようになりました。
ただしその基準は厳しく、患者さん側と歯科医院側それぞれに以下の基準が定められています。
<患者側の基準>
以下のいずれかを満たしていてインプラントを希望する人は健康保険が適用されます。
- 医科の保険医療機関の主治医によって生まれつきの病気と診断され、
なおかつ顎骨の1/3以上が連続して欠損している場合 - 腫瘍や顎骨骨髄炎などの病気、もしくは事故によって顎骨の1/3以上を失った場合
- 顎の骨の形成不全であること
これらの基準をまとめると、生まれつきの病気や大きな病気、もしくは事故が原因で、
顎の骨が一定の範囲以上欠損していることが条件になっていることが分かります。
つまり、「虫歯で歯を1本失った」などの場合は、確実に自由診療になるのです。
<歯科医院側の基準>
以下の基準を全て満たした歯科医院でなければ、保険診療でインプラントを行うことはできません。
- 病院(入院用のベッドは20床以上ある施設)になる歯科、もしくは口腔外科である
- 下記のいずれかに該当する歯科医師が、常勤で2名以上配置されている
- 当直体制、国が定めている医療機器、医薬品などの管理が整備されている
・その病院の歯科、または口腔外科で5年以上の治療経験を持つ
・インプラント義歯の治療経験を3年以上持つ
これらの基準のポイントは、「入院用のベッドは20床以上ある施設」という点で、
歯科医院としては大きな規模であることが分かります。
例えインプラントの専門医が在籍していても、街の歯科医院くらいの規模では基準は満たしていないでしょう。
まとめとして、
「患者側の基準を1つ満たしている」+「歯科医院側の基準を全て満たしている」=「健康保険が適用される」
ということになります。
健康保険適用の場合の費用について
インプラントで健康保険が適用される場合も、対象となるのはあくまでインプラントの治療費です。
- インプラントを製作するための材料費
- 入院が必要になった際の入院費
- メンテナンスの費用
これらの費用は別途必要になるため、やはり従来の歯科の医療費に比べると高くなるでしょう。
ちなみに、費用が安くなるという点では、インプラントは医療費控除の対象になるので覚えておきましょう。
まとめ
いかがでしたか?
最後に、インプラントと健康保険適用についてまとめます。
1. インプラントが自由診療になる理由 :病気を治すための治療ではあるが、必要最低限以上の治療のため
2. インプラントの健康保険適用 :一定の基準を満たしている場合、インプラントでも健康保険が適用される
3. 健康保険適用の場合の費用について :材料費・入院費・メンテナンス費などが別途発生することになる
これらのことから、インプラントと健康保険適用について分かります。
インプラントは基本的に自由診療ですが、例外として健康保険が適用されることがあります。
ただし、その基準は厳しくなっており、患者さん側・歯科医院側に細かく基準が定められています。
また、これらは2014年の健康保険改定によって変更となった要素であり、
今後の健康保険改定によってはまた違った内容になる可能性もあるでしょう。