歯槽膿漏と歯周病は違うものですか? blog

2017.03.28

杉並区の歯医者さん、浜田山おとなこども歯科・矯正歯科です。
今回のテーマは「歯槽膿漏と歯周病は違う病気なの?」です。
歯肉の病気と聞いてイメージするのは、大抵の場合が歯槽膿漏と歯周病です。

最も、この二つの病気の違いを考えると、症状から判断してまるで同じ病気のように思えますよね。
しかし実際に病名は異なっていますし、何が違うのか気になるという人も多いでしょう。
そこで、ここでは歯槽膿漏と歯周病をテーマにして、この二つの違いについて考えてみます。

1. 歯周病の症状

歯槽膿漏の意味を知る上で必要なのが歯周病の段階ごとの症状です。
歯周病になると歯肉に炎症が起こり、その影響で歯肉に腫れや変色が見られるようになります。
最もそれは初期段階の症状であり、進行することで炎症はさらに悪化して顎の骨が溶かされていきます。

顎の骨は歯を支える役割を果たしているため、
重度の歯周病になってこれが溶かされることで歯は抜け落ちてしまいます。
ちなみに、正確には顎の骨と言うより「顎の骨の骨体部と歯牙を結ぶ骨」が溶かされるわけですが、
この「顎の骨の骨体部と歯牙を結ぶ骨」のことを歯槽骨と呼びます。

2. 歯槽膿漏の症状と歯周病との関係

次に歯槽膿漏の症状を説明します。歯槽膿漏とは歯を支える歯槽骨が破壊され、
歯が抜けてしまうほどの重度な疾患のことです。さて、ここで上記の歯周病の症状と見比べてください。
歯周病が重度の状態になった時の症状と、歯槽膿漏の症状が非常によく似ていることが分かるでしょう。

これらは似ているどころか実はイコールであり、歯槽膿漏とは重度の歯周病のことをさすのです。
改めて症状を説明すると、「歯を支える歯槽骨が破壊され、歯が抜けてしまうほどの重篤な状態」、
これは重度の歯周病であり、同時に歯槽膿漏でもあるのです。

3. 病名が異なる理由

これについては深い理由はなく、敢えて言うなら以前は歯周病の酷い状態を歯槽膿漏と呼んでいたからです。
「歯周病が悪化して歯槽膿漏になる」…このような表現を用いていましたが、
結局は歯周病の進行によって辿り着く症状でもあるため、ひとまとめで歯周病と呼ぶようになったのです。

これは病名を説明する上で特に珍しいことではありません。
同じ病気でも二種類の呼び方がある例は実は身近にも複数あり、例えば花粉症もその一つです。
花粉が原因となるアレルギーであるため、「季節性のアレルギー性鼻炎」という呼び方もあれば、
前述したように「花粉症」という呼び方もあり、どちらも間違いではないですし、全く同じ病気です。

4. 歯槽膿漏のインパクト

日本人が歯を失う要因として最も高いのは歯周病で、それだけ歯周病は私達にとって深刻な病気です。
ただ、残念なことに歯周病を軽視する人が多く、虫歯に比べて危機感を持たない人が多いのです。
これは虫歯のように痛みがないことで、治療を受ける積極性が持てないのが要因の一つです。

現に「あなたは虫歯です」と言われるのと「あなたは歯周病です」と言われるのとでは、
前者の方が受けるインパクトが強いですからね。その点、歯槽膿漏は危機感を持てる病名です。
何しろ「歯槽骨から膿みが漏れる」と書いて歯槽膿漏ですから、歯周病に比べてインパクトのある響きです。

そんなインパクトのある病名を使うことで患者さんに心理的に危機感を持ってもらう、
それが目的で敢えて歯槽膿漏と表現することもあるのです。

5. 突然歯槽膿漏になるケース

「重度の歯周病=歯槽膿漏」なら、普通に考えれば突然歯槽膿漏になることはあり得ないわけで、
段階としてその前に歯周病になるはずです。それにもかかわらず突然歯槽膿漏と診断された…
これは一体なぜなのでしょうか?この理由は、歯周病になっていたことに気付いていなかったのが原因です。
歯周病は静かに進行すると言われるほど自覚症状がありません。

歯肉の腫れや変色は起こるものの、虫歯の痛みのように分かりやすい自覚症状がないのです。
このため自分が歯周病になったことに気付かず、知らない間に進行してしまうことがあるのです。
気付かないまま進行していつの間にか重度段階の歯周病になってしまうことで、
突然歯槽膿漏だと診断されてしまうのです。

まとめ

いかがでしたか?
最後に、歯槽膿漏と歯周病は違う病気なの?についてまとめます。

  1. 歯周病の症状 :歯肉に炎症が起き、重度になると歯を支える歯槽骨が破壊され、歯が抜け落ちてしまう
  2. 歯槽膿漏の症状と歯周病との関係 :重度の歯周病と同じ。つまり「歯槽膿漏=重度の歯周病」
  3. 病名が異なる理由 :以前は歯周病の酷い状態を歯槽膿漏と呼んでいた
  4. 歯槽膿漏のインパクト :歯槽膿漏の文字が持つインパクトから、敢えて歯槽膿漏と表現することもある
  5. 突然歯槽膿漏になるケース :初期段階の歯周病に気付かず、重度段階まで進行させてしまったため

これら5つのことから、歯槽膿漏と歯周病は違う病気なの?について分かります。
歯槽膿漏は重度の歯周病だと思ってください。「歯槽膿漏=歯周病」でも間違いではないですが、
「歯槽膿漏=重度の歯周病」とイメージした方が分かりやすいでしょう。
つまり、自分が歯槽膿漏だと言われた時には特に深刻な状態と考えなければならないですし、
逆に初期段階のうちに歯周病を治療しておけば、歯槽膿漏になることはないわけです。